明日へと向かう旅

初期研修を終了し、JapanHeartという団体のもとで、カンボジアで医療支援を行います。日々の生活や印象に残ったことを書きとめていきます。

正解ではないかもしれないけれど、納得のいく答えを見つける

お久しぶりです。

いつでも元気もりもりです。

 

カンボジアにはチャリティーの小児病院がいくつかあります。つまり小児には無料で医療を提供している病院です。ジャパンハート小児医療病院はその中の一つです。ですから小児に関しては、貧しい人でもなんとか病院にさえたどりつければ、何とか医療が受けられる病院がいくつかあります。

ところが大人に関しては無料で医療を提供している病院はおそらくありません。(例えばHIVや肝炎ウイルスの治療などある特定の疾患に対して医療を提供している団体はあります)患者さんにとってどんな病気も無料で診てくれる場所はジャパンハートだけです。

そんな事情もあり色々な社会背景をもつ患者さんがきます。

 

今日はある患者の話をしたいと思います。

彼は右胸壁に巨大の腫瘍があり来院しました。前医で生検され、化学療法を行ったものの腫瘍は小さくならず、むしろ大きくなり、困り果てて来院しました。

 

正直私たちに治療ができるのか判断が難しい症例で、手術をやってみることはできるが、かなり難しいというお話をしましたが、本人は、「手術は怖くない、このままどんどん大きくなっていくのを待つ方が不安だ」と言って手術をお願いされました。

実際手術をすると、腫瘍は胸壁の深くまで食い込んでおり、到底切除は不可能な症例でした。おそらく、日本でしっかり術前検査をして準備をしていれば、手術をするということにはなっていなかったかもしれません。

 

とにかく、手術をしてみたもののただただ患者を傷つけてしまい、手術を行うべきではなかったのではないかと思い悩みましたが、術後しばらくして手術の痛みが落ち着くと、患者は私たちに優しく話してくれました。

「手術をして腫瘍が小さくなって、胸の痛みが和らいだ。ありがとう。」

おそらく満足いく結果ではなかったと思いますが、患者が私たちの医療行為に対して感謝してくれました。本当に心が救われました。素直にこの言葉を受け取ってもいいのかはわかりませんが、私たちは間違っていなかったかもしれないと思いました。

その後の経過について書こうと思えばキリがないですので割愛させていただきますが、最後は患者さんの希望で、病院で亡くなるギリギリまで診続けました。(カンボジアでは亡くなるなら家に帰りたいという方が多いなかで、患者はここでのケアを受け続けたいと言っていました)

この患者さんから学んだことは、患者の望みを、希望が薄くても何とか叶えてあげようとする行為に、たとえうまくいかなくても患者は救われるのではないかということです。患者は前医で化学療法をしたのに腫瘍が大きくなり、医者にこれ以上治療できないと言われ、途方に暮れていました。おそらく手術を受ける時点でいろいろな覚悟をされていたのだと思います。

 

 

たぶん患者にとって、一番怖いのは病気を抱えながらもどの病院にもみてもらえず見放されてしまうことです。私たちはカンボジアで唯一大人に対しても無料で医療を行う病院ですから、患者にとっても最後の最後の望みをかけてくる人もいます。私たちにも技術的にや医療機器がなくて限界というものはあるのですが、もし治すことができなくても、決して見放さないことが大切なのではないかと思いました。治療できないのに診続けることは、なかなか医療者としても辛いです。だんだん悪くなっていく患者を診続けることは辛いです。それでも、患者が望むのであれば、ここでできることはなるべくしてあげられればいいなと思います。

もしかしたら無料で診てあげる唯一の病院だからこそ、将来は、最後の時を穏やかに過ごせるような場所や痛みをとってあげられる薬が増えたらいいなと思います。

 

 

今後も、もし目の前に私には手に追えなさそうな患者が来たとしても、なんとか患者にとって満足ができるように、たぶん医療的に正解ではないかもしれないですが、なんとか満足してもらえるように、診てもらって良かったと思ってもらえるように、何か解決策をみつけられるよう向き合っていきたいと思います、

 

それでは明日も元気もりもり頑張ります

もりもり

 

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症例検討会の様子